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借入はいくらまでなら適正? 中小企業の借入水準を判断する方法
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投稿日2026.09.09

借入金利の上昇が、融資条件にもはっきり表れてきています。
日本政策金融公庫の中小企業事業では、2026年9月1日から、貸付期間5年以内の基準利率が2.95%となりました。8月3日時点では2.75%だったため、わずか1か月で0.20ポイント上昇しています。
また、日本銀行は2026年7月の展望レポートでも、経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく方針を示しています。今後も、企業にとって借入金利を意識した財務管理の重要性は高まっていくと考えられます。
出典:
日本政策金融公庫「金利情報 中小企業の方【中小企業事業】」(2026年9月1日実施)
https://www.jfc.go.jp/n/rate/base.html日本銀行「展望レポートのハイライト(2026年7月)」
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202607.htm
こうした状況になると、「金利が上がる前に借入を減らした方がよいのではないか」と考えたくなります。しかし、借入金は少なければ少ないほどよい、というものではありません。
大切なのは、借入金の総額ではなく、その「中身」を分解して、何で・いつ返すべきお金なのかを把握することです。この記事では、貸借対照表から自社の適正な借入水準を導き出す考え方をご紹介します。
借入金は、その目的によって性質がまったく異なります。ひとつの「借金」として合算してしまうと、本来は心配しなくてよい借入まで不安の種になってしまいます。

| 借入の種類 | 何に対応する借入か | 返済の考え方 |
|---|---|---|
| 運転資金対応分 | 売掛金・在庫などの日常的な事業運営に必要な資産 | 事業を続ける限り一定額が残り続けるのが自然。無理に返済を急ぐ必要はない |
| 設備投資対応分 | 機械・車両など、時間の経過で価値が減っていく資産 | 資産が生み出す将来の利益で計画的に返済していく |
| 不動産対応分 | 土地・建物など長期保有前提の資産 | 20〜30年の長期契約が前提。10年という目安は当てはまらない |
この区分をせずに借入総額をひとまとめにしてしまうと、「返済年数を計算したら15年、20年になってしまった」というような、実態とズレた不安が生まれます。まずはこの3分類を意識することが、適正水準を考える出発点です。
運転資金対応分の借入がいくらまでなら健全かは、次の式で計算できます。
在高方式(おおまかな計算)
正常運転資金 =(売掛金+受取手形+棚卸資産)-(買掛金+支払手形)
売掛金や在庫は、取引先の資金繰りに大きな問題がない限り、いずれ現金化される資産です。そのため、この金額に見合う借入は「現金に近い資産」に対応しており、事業を継続する限り一定の残高を保ち続けるのが自然な状態です。
売上が伸びれば正常運転資金も増え、それに応じて借入残高が増えるのもまた自然な動きといえます。
正常運転資金の大きさは、業種や取引条件によって変わります。現金をいくら持つべきかについては以下の記事も参考にしてみてください。

正常運転資金でカバーしきれない借入、つまり手元の現金や資産だけでは返しきれない部分こそが、将来の利益で返していくべき借金です。
これを要償還債務と呼びます。
要償還債務 = 借入金(不動産関連を除く)- 現預金 - 正常運転資金

この金額を把握できれば、経営目標として向き合うべき「本当の借金」がいくらなのかが明確になります。逆に、要償還債務がマイナスであれば、無理に借入圧縮を急ぐ必要はありません。
要償還債務が算出できたら、次に見るべきは、今の実力(実際の税引後利益+減価償却費)でそれを何年で返せるかです。
償還年数 = 要償還債務 ÷(税引後利益+減価償却費)

ここで注意したいのは、「毎月の約定返済額」を基準に償還年数を考えてしまうケースです。毎月の返済額には、本来は残高を維持してよい運転資金部分の返済も含まれています。
これを区別せずに「借入金は利益で返すもの」と一律に捉えると、実態よりも償還年数が長く出てしまい、必要のない危機感につながります。
償還年数が思いのほか長かった場合、「では何年で返せる状態にしたいか」という目標年数を決めれば、そこから必要な利益水準を逆算できます。
年間返済原資の目安 = 要償還債務 ÷ 目標償還年数
たとえば要償還債務が5,000万円あり、5年で返せる状態を目指すなら、年間1,000万円程度の利益・減価償却費が目安になります。
ただし、「利益目標を達成すること」自体が経営のゴールではありません。利益はあくまで、貸借対照表を健全な状態に近づけるための手段のひとつです。人材投資や広告投資、採用コストまで過度に抑えてしまっては本末転倒です。

適正な借入水準を考えるときは、借入総額だけで判断せず、次の順番で整理していきます。
借入は、少なければ少ないほどよいわけではありません。大切なのは、事業を続けるために必要な借入と、利益から返していくべき借入を分けて考えることです。
また、借入水準を考えるうえでは、どの程度の現預金を手元に残すかも重要です。
次の記事では、「会社はいくら現金を持つべきか」という視点から、あるべき現預金水準についてご紹介します。
当事務所では、決算報告の際にMcss経営診断システムを活用した財務分析資料を、決算書とあわせてお渡ししています。
正常運転資金・要償還債務・CRDランクなどを確認しながら、毎期の決算時に適正な借入水準や財務状態を一緒に確認しています。ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。
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