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会社はいくら現金を持つべき? あるべき現預金水準の考え方
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投稿日2026.09.09

2026年8月の企業景況調査では、仕入価格について「上がった」と感じる企業が「下がった」と感じる企業を大きく上回っています。
販売価格も上昇傾向にありますが、仕入価格の上昇圧力の方が強く、価格転嫁を進めても利益や手元資金が圧迫されやすい環境が続いています。
出典:帝国データバンク「2026年8月の景気動向調査」(2026年9月3日)
https://www.tdb.co.jp/report/economic/ets202608/
こうした環境では、決算上は利益が出ていても、仕入・外注費・人件費などの支払いが先行し、手元の現金が思ったほど増えないことがあります。
また、売上が伸びる局面では、売掛金や在庫が増えることで、むしろ必要な運転資金が大きくなるケースもあります。
そのため、「借入をできるだけ減らす」ことだけを目標にすると、必要な手元資金まで返済に回してしまい、かえって資金繰りの余裕や経営の自由度を下げることがあります。
前回の記事では、正常運転資金や要償還債務、償還年数から「本当に返すべき借入」を把握する考え方をご紹介しました。

今回は、その借入水準とセットで考えたい「あるべき現預金水準」について、会社はいくら現金を持っておけばよいのかを考えていきます。
現預金の目安としては、月商の3ヶ月分あれば一定の安心材料になると言われています。
ただし大切なのは、「3ヶ月分」という数字そのものではありません。「売上が止まったとして、何ヶ月分の支払いに耐えられるか」というリスクの物差しを持つことです。
自社の資金繰りサイクルに照らして、「何ヶ月分あれば安心して経営できるか」を具体的に考えることが重要です。
必要な現預金水準は、業種や取引条件によって変わります。特に、入金よりも支払いが先に発生する業種では、売上が増えるほど一時的な資金負担が大きくなります。

| 業種 | 資金繰りの特徴 |
|---|---|
| 建設業 | 工事完了・請求まで入金がなく、外注費や資材費の支払いが先行しやすい。受注が増えるほど正常運転資金も膨らみやすい |
| 卸売業 | 売掛金と在庫の両方を抱えやすく、支払サイトより入金サイトが長い場合は取引規模に比例して資金負担が増えやすい |
| 製造業 | 原材料・仕掛品・製品と複数段階の在庫を持つため、運転資金が大きくなりやすい。設備投資との両面で資金余力を見る必要がある |
| 飲食業・小売業 | 現金商売が中心で売掛金は比較的少ない一方、家賃・人件費など固定費の比重が高く、売上減少時にどこまで耐えられるかが重要 |
したがって、「月商3ヶ月分」という目安も、すべての会社に一律に当てはめるものではありません。自社の入金サイト、支払サイト、在庫の持ち方、固定費の大きさなどを踏まえて判断する必要があります。
現預金水準は、「借入はいくらまでにするか」を先に決めて逆算するのではなく、まず確保したい現預金水準を決め、そこに向けてどれだけ借りるべきかを考える、という順番が重要です。
借入額の上限から考え始めると、どうしても借入に消極的になり、結果として手元資金が細り、いざという時の投資判断が遅れる原因になります。
考え方の順番
1.確保したい現預金水準を決める
2.現在の手元資金との差額を確認する
3.必要に応じて借入で補う
見落とされがちなのが、取引規模の拡大にあわせてキャッシュポジションそのものを引き上げなければならない場面があるという点です。
たとえば、外注費の支払いが翌月、売上の入金が2ヶ月後という会社で大型受注が増えれば、売上は伸びていても入金前の立て替え負担は大きくなります。利益が出ているからといって、手元資金が十分とは限りません。
このような会社で「借入金が少ない状態」を維持すること自体が目的になってしまうと、受注拡大に手元資金が追いつかず、かえって資金繰りを圧迫しかねません。
つまり「借入金が少ない=健全」ではありません。まず適正なキャッシュポジションを見極め、そこに足りない分を借入で補うという発想が本来の順序です。

逆に最も避けたいのは、キャッシュポジションが月商の1ヶ月分を下回り、入ってくるお金と出ていくお金の帳尻を合わせるだけで手一杯になる状態です。
ここまで現預金が細ってしまうと、新規の投資判断どころか、日々の支払いそのものが経営の最優先事項になってしまいます。
適正なキャッシュポジションを考えるということは、この状態に陥る前に、余裕を持って手を打つということでもあります。

企業経営における本来の目的は、借入金をゼロにすることでも、利益を積み上げること自体でもありません。手元に現預金を残し、資金繰りに追われず経営に専念できる状態をつくることです。
借入金の多い・少ないだけで財務状態を判断せず、事業規模や成長スピードに対して、十分な現預金を確保できているかを継続的に確認することが重要です。
当事務所では、決算報告の際にMcss経営診断システムを活用した財務分析資料を、決算書とあわせてお渡ししています。
正常運転資金・要償還債務・CRDランクなどを確認しながら財務状態を整理するとともに、必要に応じて期中の資金繰りや借入、今後必要となる手元資金についても一緒に検討しています。
ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。
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