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銀行はなぜ「雨の日に傘を貸さない」のか

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投稿日2026.08.17

帝国データバンクの集計では、2026年上半期も企業倒産が高水準で推移しています。

特に注目すべきなのは、単なる業績不振だけでなく、原材料費や人件費の上昇、人材確保の難しさといった経営環境の変化が、企業の資金繰りを圧迫している点です。

さらに、「物価高倒産」「人手不足倒産」はいずれも半期ベースで過去最多を更新しており、コスト上昇への対応力や資金余力の差が、企業経営により強く表れる局面になっています。

2026年上半期の倒産件数は5335件(前年同期5003件、6.6%増)と、前年から332件増加し、4年連続で前年を上回った。上半期としては、2年連続で5000件を超える高水準での推移となった。

出典:帝国データバンク「倒産集計 2026年上半期報(1月~6月)」(2026年7月8日)

こうしたニュースを目にするたび、「うちも他人事ではない」と感じる経営者もいるはずです。

「業績が悪化してから相談したら、銀行の態度が急に変わった」——そう感じたことがある経営者は少なくないでしょう。

しかし、これは銀行が不誠実だからではありません。

銀行もまた、預金者から預かった資産を守り、株主に利益を還元する責任を負った、一つの営利企業だからです。

銀行のビジネスモデルを理解する

銀行の収益源は、預金者から集めた資金を企業に貸し出し、その金利差(利ざや)を得ることにあります。

この構造上、銀行にとって最大のリスクは貸倒れです。

融資先が返済不能になれば、銀行は損失を被るだけでなく、預金者から預かった資金の安全性そのものが揺らぎます。

だからこそ銀行は、融資の可否を判断する際、常に「この会社は将来にわたって返済を続けられるか」という一点を厳しく見ています。

銀行のビジネスモデル図:預金者から集めた資金を融資先に貸し出し、利ざやを得る仕組みと、貸倒れが最大のリスクであることを示す図

晴れの日、つまり業績が良く返済能力に疑いがない時期には、銀行は積極的に資金を提供します。

逆に雨が降り始めた、つまり赤字や資金繰り悪化の兆候が出た時期には、貸倒れリスクを負ってまで資金を出すことはできません。

晴れの日と雨の日で変わる銀行の融資姿勢を対比した図。晴れの日は黒字で積極融資、雨の日は赤字で融資に慎重になる流れを示す

これは感情の問題ではなく、金融機関という事業の構造そのものが導くものです。

この前提に立てなければ、銀行との付き合い方はいつまでも「困った時に助けてもらえるはず」という期待と、「なぜ助けてくれないのか」という失望の繰り返しになってしまいます。

銀行内部では何が起きているのか

融資の可否は、担当者の裁量だけで決まるものではありません。

多くの銀行では、決算内容や返済実績などをもとに融資先を格付けし、その格付けに応じて融資の可否や金利条件、担保・保証の要否が機械的に変わる仕組みになっています。

業績が悪化して格付けが下がれば、担当者がどれだけ親身であっても、審査部門や本部の承認を得ることが難しくなります。

担当者個人の熱意ではなく、数字と格付けが物を言う世界だと理解しておく必要があります。

格付けと融資条件の関係を示す図。格付けが下がるほど金利や担保条件が厳しくなり、融資の可否が数字と格付けで機械的に決まることを示す

さらに、格付けが一段階下がるだけで、金利条件が上がったり、追加の担保や保証を求められたりすることも珍しくありません。

経営者から見れば「急に態度が変わった」ように感じられても、銀行内部では規定に沿って粛々と手続きが進んでいるだけ、というケースがほとんどです。

数字に表れる頃には、もう手遅れ

多くの経営者が資金調達を検討し始めるのは、決算書に赤字という結果が出てからです。

しかし、決算書はあくまで「過去の結果」を映すものであり、銀行が見ているのはその数字の先にある再現性、つまり「この会社はまた稼げるのか」という将来への確信です。

赤字という事実がすでに数字として確定してしまった状態から融資を引き出すのは、想像以上に困難です。

銀行にとって、赤字決算後に提出される事業計画書は「これから頑張ります」という宣言に過ぎず、判断材料としての説得力を欠くからです。

「晴れているうち」に動くという選択

重要なのは、決算書に表れる前の段階で手を打つことです。

半期が経過した時点で今期の着地見込みを大まかにでも把握し、去年より悪化しそうだ、あるいは赤字の可能性がゼロではないと感じた時点で、まだ業績が黒字である「晴れているうち」に資金を確保しておく。

この一手間が、その後の資金繰りの自由度を大きく左右します。

業績の悪化は、ある日突然決算書に現れるわけではありません。

多くの場合、その予兆は数ヶ月前から静かに存在しています。

経営者に求められているのは、銀行のビジネスモデルを正しく理解した上で、その予兆を数字が確定する前に察知し、動くことなのです。

今日からできる備え

具体的には、次のような備えが有効です。

  • 月次試算表を毎月銀行に共有し、業績の推移を継続的に見てもらうこと
  • 半期ごとに今期の着地見込みを自ら説明し、良い時こそ接点を増やしておくこと
  • 資金需要が発生してから動くのではなく、業績が黒字のうちに融資枠や当座貸越などの備えを整えておくこと

これらはどれも地味な積み重ねですが、いざという時の交渉力の差となって表れます。

銀行が雨の日に傘を貸さないのは、当たり前のことです。

だからこそ経営者に求められているのは、銀行の論理を理解した上で、晴れているうちに傘を用意しておく、その一点に尽きるのかもしれません。

次回は、金利が上昇局面に入りつつある今、銀行がどのような目線で融資先を見ているのか、そして経営者が「金利が上がる前」にどう動くべきかを解説します。

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